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大気潮汐

　海に潮の満ち引きがあることは，誰でも知っていますね。釣りやサーフィンをする人だけでなく，江ノ島の稚児が淵で遊ぶときも(^_^;)，潮が満ちているかどうかは大きな問題です。

　ところで，私たちの周りにある大気にも満ち引きがあるのを知っていますか？

　と言っても，大気は見えませんので，潮汐どころか低気圧や高気圧が来たってその変化を知ることはできませんが。
　そこで，出てくるのがいわゆる「天気図」と呼ばれる気圧配置図です。

　通常は天気図は人間が解析する（実はそれが私の仕事だったりする(^_^;)）ので，客観的な天気図とは言えませんが，スーパーコンピューターで計算した数値予報天気図は大気に影響する全ての力を考慮して計算する（完全に取り入れることは不可能だが）ので，客観的な天気図といえます。

　ＧＳＭ図

　この図は，１９９８年９月９日の００ＵＴＣ（世界標準時の０時：日本時間の午前９時）を初期値とする，ＧＳＭ（Global Spectoral Model：全球スペルトルモデル）の６時間ごとの地上天気図の予想値です。等圧線は４ｈＰａごとに引いてあります。

　０６，１８，３０，４２後の予想値に１００４ｈＰａの等圧線（図の赤い等圧線）が現れているがわかります。この時間だけ，このフィリピンの東の海域の気圧が低くなっているわけで，見事に１２時間周期の大気潮汐が計算されているわけですね。

　一方，１０２０ｈＰａの等圧線（図の緑の等圧線）は２４ＵＴＣまで徐々に大きくなり，その後徐々に小さくなっているのが分かります。これは，大気潮汐以外の力（要するに低気圧や高気圧を発生消滅させる力）の方が大きいために，大気潮汐が目に見えては分からないということです。

　ところで，海の潮汐が月と太陽と地球の引力の合力で発生するのに対し，この大気潮汐は太陽の日射により空気が暖められるために発生します。

　え？１８ＵＴＣって，朝の３時だから大気は冷やされているんじゃないのって？

　そう，２４時間周期の力が働いて１２時間周期の振動が発生しているんです。